国立病院機構和歌山病院 院長 南方良章
国立病院機構和歌山病院は、第2次世界大戦中に、当時蔓延していた結核患者収容目的に、「日本医療団延寿浜園」として450床で昭和19年9月27日開所しました。その後、昭和22年4月1日より当時の厚生省に移管され、「国立療養所延寿浜園」として国立病院となり、昭和49年「国立療養所和歌山病院」と改称、平成16年に「独立行政法人国立病院機構和歌山病院」に移行され現在に至っています。現時点では、以前の「療養所」のイメージは払拭され、呼吸器内科・呼吸器外科・循環器内科を中心とする専門病院として、日本呼吸器学会、日本外科学会、日本胸部外科学会、日本呼吸器外科学会、日本循環器学会、日本高血圧学会、日本神経学会等主要学会の施設認定を受けており、診療・教育に携わっています。
現在、一般病床145床、結核病床20床、重症心身障害者病床160床の計325床を有しています。医師は、呼吸器内科4名、呼吸器心臓血管外科2名、循環器内科2名、神経内科1名、小児科1名の常勤医に加え、週3回以上勤務の非常勤医が循環器内科1名、小児科1名、週1回非常勤医が、呼吸器内科3名、神経内科1名が勤務しています。 本院の最大の特徴は、呼吸器内科・呼吸器外科診療体制が充実していることです。80列のCT装置、リニアック治療装置、超音波気管支内視鏡装置、終夜ポリソムノグラフィ測定システム、精密呼吸機能検査、心肺運動負荷システムなどに加え、呼吸リハビリテーションも充実しており、県内でもトップクラスの呼吸器診療が可能であります。県内各臨床病院において医師不足のため呼吸器診療に困難をきたしている現況の中、当院の県内における呼吸器診療ならびに教育の役割が一段と大きくなってきています。今後、若い医師・看護師等の臨床教育の基幹病院としての自負をもち、自己研鑽ならびに環境整備を目指してまいります。
2点めの特徴は、稼働中の結核病床を有する県内唯一の病院であるという点であります。全国的に結核新規発症者数は減少しているとはいえ、和歌山県は人口当たりの新規発症数が極めて高く、ここ数年全国2位から8位の位置にあります。県の結核診療の中心的病院として、結核治療はもちろんのこと、結核発症抑制に向け、行政との連携強化や県内医療機関ならびに県民に対する啓発活動等も、これまでにもまして積極的に取り組んでおります。
3点めの特徴は、和歌山県立医科大学附属病院とともに、県内で2施設のみの神経難病医療ネットワークの拠点施設である点であります。常勤の神経内科専門医を配置し、呼吸器内科医師の協力体制のもと、人工呼吸器装着も含めた神経難病患者管理も多数行っております。収容可能患者数をさらに広げるための人員ならびに環境整備と、他の医療機関とのネットワークの充実化を積極的にすすめております。
4点めの特徴は、地域に根ざした病診連携体制を充実させている点であります。地域医療支援病院の認定を受け、特に呼吸器・循環器疾患に関しては、紀中の中心的医療機関として24時間体制で貢献してきております。今後とも周辺病院との連携を密にして、効率的に地域住民に対する充実したサービスの提供に努めてまいります。
5点めの特徴は、重症心身障害者病棟をもち、多くの方々を受け入れている点であります。ご家族が宿泊できる施設も完備し、患者・家族との触れ合いの時間をより確保しやすい体制をとっています。さらに、津波対策として、推定される津波が押し寄せたとしても患者の安全を確保できる設計に基づいた新棟を、H26年6月着工、H27年7月竣工予定で建築開始いたします。より安心できる療養体制の構築に目指しています。
最後に、本院は、阪和自動車道・湯浅御坊道路の御坊ICより西に約5kmで、初代紀州藩主徳川頼宣が防潮林として植えさせた最大幅500m長さ4kmにわたる黒松による松林が広がる煙樹海岸県立自然公園内の中に位置します。また、海岸は太平洋を望む全長約6kmの石の海岸で、日本の白砂青松百選ならびに和歌山県朝日夕日百選にも選ばれている風光明媚な地であります。病院敷地は広大で、しかも前述の如く、病棟建替えにより安全で快適な医療空間を提供できると自負しております。地域医療、県民医療の中心病院として、また、呼吸器内科医・呼吸器外科医をはじめとする若い医師・看護師の教育病院として、多くの医師が集まる病院、地域の方々から選ばれる病院を目指して積極的に取り組んでまいります。